―識学を導入しようと決めた経緯について教えてください。
識学のことは2019年の夏にネット広告を見て知り、意識するようになっていました。その頃からマネジメントの悩みを抱えていたのです。
というのも、ある部署にいた10人程度の社員のうち、5人のベテランが一斉に退職するという事件がありました。1人の社員が「辞めます」と言ったら、芋づる式に抜けていってしまったのです。
それでも会社を畳むわけにはいきません。残ったのは、社歴が10年程度のメンバーが2人、入社から半年しかたっていない若手が2人。そこに私が加わって、「さあ、どうしようか」と会議をしましたが、一人ひとりが異なる価値観をぶつけるだけで、全然話がまとまりませんでした。
今振り返れば、私は識学の広告にあった「あなたはこんなマネジメントをしていませんか」という通りのマネジメントをしていましたね。機嫌を取るために社員をご飯へ誘ったり、社員の性格に合わせて言い方を変えたり、いわゆる、社員に寄り添ったマネジメントをしていたのです。
しかし、これだと私の真意が伝わりません。何より、私がこのために非常に多くの時間を割かねばらず、疲れ果てていたのです。
識学の資料をダウンロードしてみたところ、ご連絡をいただき、講師の方から話を聞くことになりました。2019年9月のことです。すぐに導入を決めたので、10月から受講を開始しました。
―当時は社内でどのようなことが起きていたのでしょうか。
私より社歴の長い社員たちが私の指示を聞こうとしませんでした。私自身、マネジメントの正解が分かっていませんでしたから、仕事を命じて、「そんなの無理です」と言われると、「そうなのかな」と思ってしまい、強い態度を取ることができませんでしたね。
なかには、「社員皆の味方」を自負し、意見を集約して私に上申することを仕事の一部にしている課長がいました。反対に、私から今までの慣習を壊すようなことを彼に言うと、彼は自分の部下に対してそれを伝えようとしなかったのです。
識学を導入する半年前に、当社としては珍しく新卒社員が数名入社しましたので、私はこれを機に、「教育カリキュラムを整えましょう」と社内に号令をかけつつ、「新人に示しがつかないから、今まで一人ひとりに合わせて変えていた指導の仕方を改め、皆平等に接することにします」と宣言しました。そうしたら、特に気難しい性格だった社員が辞めてしまうということもありました。
識学導入は存続のために必要な投資。
それを惜しんで会社が崩壊する方が問題
―識学の導入に際して迷いはありませんでしたか。
全然ありませんでしたね。識学は、意識構造学という学問をベースにした考えであり、そこに信頼感がありました。
私自身、大学生だった頃に心理学を学んでおりましたので、「こうすれば人は動く」という知識はあったんです。ただ、それゆえに細かく人の特性を見極めないといけませんし、私にしかできませんから再現性がありませんでした。
私は社長ですが、母が常務をしていまして、筆頭株主でもあります。それゆえ、識学を導入するにあたり母を説得しなければなりませんでしたが、その時間がもったいないと感じ、自分のお金で投資することにしました。それくらいの覚悟を持って会社を変えたいと思っていたのです。「会社が崩壊するかもしれない」という危機感を本気で抱いていましたから。
決して小さくない額の投資でしたが、会社が存続できるのだったら十分回収できると思っていました。それを惜しんで会社がバラバラになってしまったら、その方が問題です。
―他のコンサルティングサービスは検討しませんでしたか。
もともと、私が社長に就任する前から他社のコンサルタントにお世話になっていました。社長に就任してからは、営業会議の改善を図るための意見をもらったりとか、若い管理職向けに改善思考に関するレクチャーをしてもらったりもしましたね。
ただ、これまでの組織を大きく変えることを考えたときに、今までお付き合いのあるコンサルタントに頼っては、改革のスピードが遅れる気がしたんです。当社の内情を把握し過ぎているがゆえに私や会社に寄り添ってしまうだろうと。
識学であれば、それができるかもしれないという期待があったのです。もしこれでだめだったなら、また別の方法を探せばよいと考えていました。