―施設を開業される前の2023年2月に識学をご導入いただきました。その経緯をお話しください。
14年間の銀行勤務で、法人営業として数多くの企業を見てきました。その中で、正しいビジネスモデルを正しく経営し、正しい組織の仕組みやルール、公明正大な透明性のある評価制度をつくり、それに共感する人材を集めれば、社会の役に立つ会社や人材がつくれると考えていたのです。
一方、実際の勤務先である銀行では、二つ三つ上の上司や斜めの部署の管理職から指示や意見を言われたり、斜めの部署に根回しをしたりといった、識学でいう「一個飛ばし」や「斜めの関係」が多かったため、意思決定に時間や工数がかかることが多く、また、人事評価制度が主観的で曖昧で、人事評価の内容が「協調性がある」「チャレンジ意欲がある」「コミュニケーション力がある」といった不明瞭で恣意的なものだったのです。また、長らくある360度評価や、新たにプロセス評価なるものができ、その評価がウエイトを占めるようになったことから、本当に実力があり結果を出した人よりも、上役や部下に迎合するような人が高く評価されるといった実態もありました。結果、長く働くほど成長曲線が鈍化していくような印象があり、若い人ほど辞めていき、所謂「働かないおじさん」を多数輩出していました。
加えて、曖昧な評価や迎合人事でトップやリーダーになるケースが多いと、例えば、足元で明らかに失敗しているプロジェクトや施策でも、自分を引き上げてくれた方が決めた施策であると、その人の顔が浮かぶのか(引き上げてくれた方の顔に泥を塗るとの思いからか)、撤退という正しい経営判断・決断ができず、結果、問題の先送りをしているケースも多々見受けられます。
そうした中で、迎合が苦手な私であっても、銀行では最も高い人事評価を得てはいたのですが、モヤモヤした疑問がついてまわっていたわけです。
また、銀行勤務時や退職後、様々な施設を見ましたが、ルールではなく声の大きい人の意見が通るような傾向があり、「自分は仕事ができるから何をやってもいい」といった治外法権的な感じで組織を乱す状況も見受けられました。
―いずれも、明確な制度やルールがないことによる弊害ですね。
モヤモヤに対してどうすればいいかという答えを持ち合わせていなかったのですが、すでに会社を設立して考えあぐねていた時、たまたま書店で安藤社長の『リーダーの仮面』を見つけ、手に取りました。隣にあった『数値化の鬼』とともに一読し、まさしく私のモヤモヤに対する答えが書かれている、私の価値観と非常に一致している、と驚きました。
そこで、識学を学んで自らのマネジメントの基点とし、自社の組織運営に生かそうと考えたというのが導入の経緯です。
―実際に識学のトレーニングを受けてどういった感想を持ちましたか?
本で読んだことをより深く学べたという感じがしています。コンサルタントの話には論理破綻がなく、明快に理解できたことが印象的でしたね。