識学を導入する前、組織マネジメントにおいて感じていた課題についてお聞かせください。
組織としてバラバラで、それぞれの役割や責任が明確ではありませんでした。業績は伸びていましたし、今後もよりスケールしていく方向性で投資をする計画もあったのですが、一方で、会社として目指すべき成長戦略を描いたときに、果たして今のままの組織で実現できるのか不安がありました。
離職の多さには20年以上も悩まされていました。手塩にかけて育てても、成長したと思ったら次々と辞めてしまうんです。
会計事務所あるあるかもしれませんが、組織として動くわけではなく、お客さまと担当者との一対一の関係性が強いんですよね。それと、職人気質的な職種でもあるので、資格さえ取ってしまえばひとりでもできると勘違いして独立する人もいましたね。
あと、ひょうご税理士法人は確定申告年間1000件以上お手伝いさせて頂いており、繁忙期にはみんな常に仕事に追われているような状況でした。なので、2月~3月は23時まで働くのは当たり前。日を跨ぐこともあれば、土日返上で仕事をすることもあるなど、決して労働環境が良いとは言えない状況で……。それに耐えられずに離職をする人が後を絶たない状況でした。
今思うとですが、当時は法人化せずに個人事務所として事業を展開していて、私が全てを仕切っていたんです。部門もなければリーダー陣もいなかったので、どうしても属人的な経営になっていたんですよね。
こういった状況を改善しようと平成22年に税理士法人を立ち上げ、それに伴って経営理念・経営ビジョン・使命感を明確にして経営計画書を作成したんです。人としてどうあるべきかを考え、あいさつや整理整頓、掃除などの基本的なことを徹底するように毎朝の朝礼で愚直に伝え続けました。
私の思いが少しずつ伝わって離職もだんだん減ってきたのですが、私自身がまだ変われてなかったんですよね。なんでもかんでも口や手を出すので、思うように人が育たない……。経営者として“率先垂範”しないといけないと思っていたので、営業から税務調査時の立ち会い、セミナー講師、昇給・昇格の人事考課までひとりで何役もこなしていました。それでは下が育たないのも当たり前ですよね。
識学を導入しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
税理士法人を立ち上げたときに「10年後は事業を継承する」と考えていたのですが、継承できる人間が育つどころか相続事業部をまとめていた副代表が辞めると言いだして……。今後、私の代わりとなる人材を育成しないといけないと考えていたタイミングで、知り合いの会社さんが識学を導入しているという話を聞いたんです。気になって識学の書籍を読んだら、その後たまたまその会社さんを訪れたときに識学のトレーニング中だったんです。トレーニングの内容を聞いてみるとこれまでの私の組織論とはまったく違う斬新な理論という印象でした。
その後、本で読んだ内容や横でトレーニングを聞いていた内容をノートにまとめたんです。すると、識学の理論は会社にしろ家庭にしろ、どんな小さな組織でも効果を発揮する理論だと感じたんです。これが組織の理想形だ、組織はこうあるべきだ、と。今後、事業を継承するための最後のチャンスだと思い、識学を導入することにしました。トレーニングを受けてみて感じましたが、どうしてはじめから識学の理論を取り入れていなかったのか……。今さら反省してもしょうがないですが、本当にそう思いますね。