個人の目標を設定し、そこに到達することが評価に 直接つながるのですから、社員は皆頑張ろうとします。個人の頑張りが束になれば、会社は自ずと成長していきます。
そういう仕組みができ上がりました。おかげさまで業績は伸び続けています。
―社内に識学が浸透していると感じますか。
幹部社員が「これって識学的に考えるとこうした方がいいよね」と言っているのを聞いたときにはそれを感じます。社員から「飲みにいきましょう」と誘われることもなくなりましたので、大体の社員は識学の基本的な考えを理解しているのではないでしょうか。
それに、私は会社にあまり顔を出さないようにしていることもあって、社員からはほとんど話しかけられません。安藤社長が言っているように、社長は孤独です。けれども、「孤独を感じてるときこそ会社が一番伸びるとき」という安藤社長の言葉を信じて、ぐっと我慢しなければいけないと気を引き締めています。
―オープンハウスグループの方針と識学理論の間で考えがかみ合わない部分はありませんでしたか。それに対してはどのように調整しているのでしょうか。
我々がオープンハウスグループ入りしたのは2020年5月であり、それまでは独立系のデザイン会社でした。オープンハウスグループに入る前から識学を学んでいましたが、両者の考えは結構近く、苦労はしていません。
例えば、組織やチームをピラミッド型にし、ピラミッドの頂点の人から順に下の階層をマネジメントしていくこと。とにかく結果を重視すること。結果に対して得られる評価が明確になっていること、など。
これらは識学理論と考え方は同じです。むしろ、識学のトレーニングを受けず、それまでのやり方のままオープンハウスグループ入りしていたら、そのギャップに戸惑いを覚え、苦労していたかもしれません。
―なるほど。では、デザイン会社のようなクリエイティブな業界と識学との相性についてはどうお考えになりますか。「あまり相性がよくなさそう……」という印象の方が多いかもしれません。
そんなことありませんよ。確かに、我々の属するデザイン業界では、感性やセンス、クリエイティビティがすごく大事です。
ただ、それだけで評価を決めているようでは、結局どこかにひずみが生じてしまいます。誰もが分かる形で結果を評価する体制が整えば、間違いなくその組織は一皮むけます。私自身がそれを確信しました。
―どのような会社や経営者に識学はお勧めでしょうか
市場がブルーオーシャンで需要が絶えないビジネスをしている会社や、誰も真似できない技術を持ったSaaS系企業であれば、市場の後押しもあって成長していきますから、もしかしたら識学は必要ないかもしれません。しかし、そんな会社はものすごく少ないはずです。
大抵の会社はレッドオーシャンのなかに存在し、他社との差別化の仕方を探しています。識学を学べばそのヒントを得られるので、あらゆる業種・業態の企業に識学の受講をお勧めしたいですね。
特に、社員同士が群れている会社、仲が良いのに業績がイマイチという会社は今すぐ識学を入れた方がよいでしょう。例えば、採用ページや求人メディアで社員同士の仲の良さや経営陣との距離の近さをうたっている会社です。仲の良さを大事にするあまり、「こんなことを言ったら傷つくだろうな」という考えが働いて、上司が部下の成長のために必要な指摘ができなくなります。
それと、思いやりのある優しい社長にも識学の受講をお勧めしたい。会社も社員も間違いなく成長します。優しい社長は、それゆえに頑張っている姿を評価しようとしますが、それでは効率的に仕事をする能力が身に付かず、業務にも工夫が生まれないため社員は成長できません。優しさが社員の成長を阻害しているのです。結果で評価することによって、社員が自分から「成長しなければ」という危機感を持つようになり、それが長い目で見れば社員のためになります。識学の安藤社長の言葉の中で最も印象的だったのが「社員に対して社長が責任を持たなければいけない最も大事なことは“成長させること”」だと。社長のその優しさが、社員の成長の芽を摘んでいるのだとしたら、一番やってはいけないことですからね。