―石井社長がSINGSの代表になった経緯からお聞かせください。
石井氏 僕は2017年にこの会社の代表に就任しました。それまでは父が社長を務めていたんですけれども、当時、会社の業績はあまり芳しくなく、僕は立て直す方法が色々あるから社長をやらせてくれないかと、自分で自分を推薦しました。
会社を良くしないと、僕自身の今後の人生がそんなに大したものにはならないだろうという思いがありました。その頃は、僕が当社に入社して3年が経ち、それまでに取り組んできたことの成果が少しずつ現れ始めていたんです。だから、こうすれば大手とも取り引きができるようになる、このやり方を進めていけばもっと業績が伸びる、などという自信があったんですね。
―無事に売り上げが伸びていった一方で、どのような課題が生じてきましたか?
石井氏 当時は40~50人規模の会社だったのに、部長もいなければ課長もいないし、リーダーもいない。ときどき、リーダー的な人がいたりいなかったりといった曖昧な組織でしたから、何か問題が起きたら、すべて社長である私のもとへ報告が上がってくるのです。それが一日に何回もありました。
社員は皆、会社の問題を解決するのは社長であったり、前社長で現会長である父であったり、私の母であったり、いずれにせよ、石井家の誰かが解決するだろうと思っているわけです。問題が起きたと報告を受けたら、当然その解決に優先して取りかかる必要がありますから、日中にそれを済ませなければならず、自分の仕事をこなすのは夕方からとなり、そうこうしているうちに帰宅は夜の9時になってしまう。そういうことが頻繁にありました。それが当時は大きな課題でしたね。
―典型的な文鎮型企業から抜け出すために、他のコンサルティングサービスではなく、識学を選んでいただいたきっかけは何でしょうか。
石井氏 社長に就任してから順調に売り上げを伸ばすことはできていましたが、それに比例するようにして問題も増えてきてしまい、組織を整えなければいけないと感じるようになっていました。そこで2019年の年初に、とりあえず課長は君、係長は君らだ、リーダーは君らだ、という風に形を作ってみたんです。
ところが、こちらが期待していたような成果は生まれませんでした。やはり組織は平らな方が良いのかなと思い始めていた矢先に、偶然識学のコマーシャルを目にしたんです。その内容は、社長が社員を労うと、社員はその日だけは頑張るんだけれども、次の日にはだらけてしまう、といったもので、これはまさに今の僕じゃないかと。そのコマーシャルを繰り返し見ているうちに、一度問い合わせてみようという気になったんです。
それから識学の講師の方とお会いし、お話いただいた内容にすごく共感できました。僕はこう考えているのに、なぜ社員はこう思っていないのだろうということに悩んでいると相談したら、「識学があればそれが治りますよ」と言われましたから、それは面白そうだ、とりあえずやってみようと思いましたね。もちろん安価とは言えませんが、そのときちょうど会社の調子も良く、売り上げが伸びている時期だったので、僕も毎日大変ですし、これで状況が改善するのならばやってみようとすぐに決めました。そんな感じでしたね。
予期せぬトラブルはなくなり予定が狂わなくなり、
社員の残業時間は1/10に。
―ご自身ではなく、社員の方に受講を勧めた理由はありますか。
石井氏 僕自身は識学の考え方に同意できる点が多いと感じていましたので、それを自分で改めて聞くよりも、社員に知ってほしいという思いが強かったんです。
例えば「有益性」の話。与えてもらうためには、こちらがあげるか、欲しいと言うかしないといけないという、実に当たり前のことなんですが、その当たり前が、組織の中にいるとできなくなってしまう。組織にいるからこそしないといけないのだ、ということを学んでもらえたら面白いかなと思ったんですね。
木下氏 私は2019年に識学を受けたとき、入社4年目でした。特にこれといった目標もなく、目の前にある仕事を淡々と朝から晩までこなすだけの作業員でしたね。
先程、石井社長から、課長や係長を決めた際のお話がありましたが、石井社長は、会議の席で、「課長や係長になりたいと思う人は挙手してほしい」とおっしゃったんです。私は課長になっても何をすれば良いか分からず不安で、そのときは手を挙げられませんでした。結局私を含め誰も立候補せず、投票の結果、私が課長になったんです。
課長になったばかりの頃は、何かしなければいけないはずなのに、何をすればよいか分からないという状況が続いていました。毎日石井社長に、「何をしたらいいですか」って聞いていたくらいです。そんな状態から識学の講義を受け始めたわけですから、「マネジメントとは何か」といった基本から学んでいった感じです。それでも、とにかく真面目に取り組みました。
石井氏 売り上げは相変わらず右肩上がりで伸ばすことができていましたが、それは識学のおかげだと思っていないんですよ。それよりも、売り上げが伸びているのに楽に運営ができるようになっていること、これこそが識学のおかげだと思います。僕としては売り上げが増加すればその分多々問題が発生するはずだと思っていたわけです。それが全然なくて、驚きました。
それを意識したのは、識学を導入して半年程度経ってからですね。問題が多すぎたら、その処理に手間取るため、受注を止めて売り上げを落とさざるを得ないという事態に陥ってしまいます。しかし、当時仕事を断るというスタンスは基本的にはなくて、どんどん入れなさいと発破をかけていました。そういう状態が維持できていましたから、これは識学のおかげだったと思いますね。
今では、問題の報告も上がってはきますが、同時にその解決策も社員が示してくれますので、それを承認して終わりですね。不規則なハプニングが減って予定が狂うなどということがなくなりましたので、自分の時間の予定が立てやすくなりました。
それに、毎月の社員の総残業時間が大きく減りました。識学を入れる以前は約1000時間ありましたが、それが半年で100時間を切るまでになりました。それでいて、よく、取引先にも、「SINGSの成長スピード、技術の発展は目まぐるし過ぎて置いていかれます」って言われるほどです。
木下氏 私は識学を始めたまさに半年後に、石井社長から次のステップに行く話をいただいきました。それが、SINGSで一つ上の役職になるか、あるいは子会社のサニーケミカルの社長になるかというものだったんです。相変わらず不安はありましたが、以前手を挙げられなかった自分を悔やんでいたので、今度こそはやるしかないと思い、社長に立候補しました。
もともと社員皆が横並びの状態でしたので、距離感というか、今までは、友達のように接していましたが、社長となればそうはいきません。そこで少し戸惑いましたが、識学では距離感についても教えてもらいましたから、それをただひたすらと実践するだけでよく、すぐに慣れました。