―事業内容について教えてください。
当社は三菱商事グループのなかで、主に国内の石油販売事業全般を手がける会社です。
ガソリンや灯油、軽油などを扱う第一本部と、重油やアスファルトなどを扱う第二本部があり、日本全国に支店を構えています。
元売り会社から石油を仕入れて、主に全国のガソリンスタンドや大手企業の工場などに卸す石油商社です。また、直営会社が運営するガソリンスタンドやトラックステーションを通じて石油製品の小売販売も行っています。
また、カーフロンティアという子会社でデジタル事業も行っています。
この会社の主な業務は、カーメンテナンス予約などのデジタルツールにより、ガソリンスタンドや整備工場などリアルの店舗へ送客を行うサービスの提供です。
―どのような経緯で識学をお知りになったのでしょうか。
もともと、私は三菱商事で人事担当をしていました。
2019年に当社の社長就任後しばらくしたとき、人事担当時代の関係者から、
「識学という人事コンサルタントがある。社長になったのを機に受講してみないか」と紹介を受けたのです。
それから、安藤広大社長とシニア講師の堀江貴寛さんにお話を聞き、識学を受講することになりました。
―社長就任時に課題に感じていたことはありますか。
当社の体制は、はっきり言って三菱商事と遜色ありません。
人事制度もしっかりしています。それこそ、石油を安定してお届けするということに関しては、我々の使命ですから、何の問題もありませんでした。
緊急時の対応についてもはっきりしています。石油は一般物資ではなく、ある意味インフラそのものですしね。
一方で、新しい取り組みを始めようとするときには物足りない部分がありました。
ある商品を「いつまでにどのくらい売るのか」といった時間軸が、社員によってばらばらになりがちだったため、その認識をしっかりと合わせたかったのです。
識学は、「いつまでにどうするか」という目標を最初に設定し、その目標の達成可否をはっきりさせます。
この意識をしっかりと持つことが大事だとかねてより思っていました。
もちろん、当社の社員は皆真面目ですし、やる気もあるのですけどね。創業間もない会社に比べたら、大きな問題がないように見えるかもしれませんが、私のなかでは十分ではないという感覚でした。
「古くて新しい」識学理論
―識学に対する抵抗はありませんでしたか。
私は紹介を受けて識学を知りましたので、識学を疑わしく思う気持ちはなかったですね。
むしろ、どんな内容か興味が尽きませんでした。
我々はある意味で古い業界に属していますから、新しいものが入ってきたときに、それを積極的に取り入れていくことは大事だと思っています。柔軟な対応力がないと、環境の変化に耐えられません。
そもそも、私は三菱商事の人事だったときから、「1on1ミーティング」や「寄り添い」など、さまざまなコーチングスタイルに触れてきましたが、それらはいずれも細かいテクニックの域を出ず、考え方の軸がないと感じていました。
それぞれ一長一短あるのでしょうが、それだけで組織の課題が解決できるかというと、そんなことはありません。最初にしっかりとした土台が必要です。
それに、流行のコーチングスタイルは、個人に寄り添い過ぎているなとも思っていました。
もちろん、これらを全否定するつもりはありませんが、仕事は組織で、チームでやるものですから、社員にそれを勘違いさせてはいけません。
識学は数少ない体系立った組織論であり、分かりやすく、頭が整理できます。
加えて、まず会社ありきで、会社があっての個人を重視します。優秀な個人が集まっていても、会社が潰れたら終わりです。会社の繁栄が社員の幸せにつながるし、社員の幸せを追求しているだけでは会社が潰れてしまう。
ただし、識学は「個人を犠牲にしなさい」と述べているわけでは決してない。
個人の利益と会社の利益のバランスを取るためにはどうすればよいかを説く理論であり、共感できます。
そういうベースの考え方がしっかりとある組織論は、あるようでないのです。
識学のような、言うなれば古くて新しい理論をそれなりの立場の人間が受けるというのは、組織にとって非常に意味があると思いました。
―識学を受講してどのような感想をお持ちになりましたか
私が識学を受講した後、当社の幹部社員や、子会社のなかでも若い会社であるカーフロンティア社の社長にも受講をさせました。組織のあるべき姿について時間をかけて学ぶことができ、皆から好評でしたよ。
カーフロンティア社も変わってきましたね。
以前は、よくあるベンチャー企業のような雰囲気でしたが、社長や管理職の役割をはっきりさせ、決めるべきことは責任者が決めるようになりましたし、スピード感についても不満はなくなってきました。
私自身も、安藤社長と話をしていて、自分の頭が整理されていったという感覚があります。私が常々思っていたことと、識学の考え方が似ている部分は多々ありました。