日野自動車 ラグビー部
監督 細谷 直 氏

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2018年1月20日。その日は、「日野自動車ラグビー部 RED DOLPHINS」にとって歴史的1日となった。ラグビーのトップリーグ(TL)初昇格を懸けたNTTドコモとの入れ替え戦に20-17で競り勝ち、昇格を果たしたのだ。
TLが発足したのは2003年のこと。以来、TLと下部リーグの入れ替え戦は計36試合行われたが、下部のチームが勝ってチーム昇格を決めたのはわずか2例(12年度:豊田自動織機、15年度:サニックス)のみ。勝率は、なんと0.056という厳しさだった。NECで監督としてTLを戦い、さらに母校・明治大学ではヘッドコーチも務めた細谷 直氏が14年度に監督就任後は、数名だったスタッフをコーチ6名・メディカル4名にまで充実させ、さらにTLを経験した選手を呼んで補強を行った結果、トップチャレンジリーグで上位を争えるチームに成長。さらに、16年度においては初の入れ替え戦挑戦への切符を手にした。結果はコカ・コーラに22-32で敗北したが、全員が「TLを目指そう」と言える手応えを掴んでいた。
そんなチームが、翌年に入れ替え戦の勝利を掴んだ背景には、実は識学の理論をベースにしたチームマネジメントがあったという。一体、どのようにチームを変革したことで、TL昇格を果たしたのか。そのサクセスストーリーの一部を、細谷監督と識学講師・後藤の対談を通じて紹介したい。

インタビュー
Interview

“マンツーマンでメソッドを学べること”が識学を選んだ決め手
後藤
「僕と細谷監督とは、お互いに面識はあるけれど直接的なつながりはなかったんですよね。選手として活動していた年代も違いましたし、所属チームも違ったので……。にも関わらず、なぜ監督は僕に会う場を作ってくださったのでしょうか?
細谷
「まぁ、後藤くんは知らない仲じゃないからね(笑)。たしか、2017年の春頃に、うちのチームのコーチ経由で「識学のメソッドを細谷監督に知ってもらいたい」という連絡をもらったんだっけ。正直、はじめは「とりあえず話は聞くよ」程度の気持ちだったよ。コーチングとか組織マネジメントに関する営業って、毎年いくつも話が来るんですよ。でも、講師がコーチ部屋に来て、「選手をいくつかのタイプに分類して〜……」といった類の机上の話に関しては、全く興味がなかったので。
後藤
「お会いして識学のご紹介をした際、トレーニングを受けることを決意してくださった決め手は何だったのでしょうか。
細谷
「「私と後藤くんのマンツーマンでトレーニングを受けられる」という点が良いと思ったんです。どういうものか全容が分からないのに、チーム全体に受けさせるのは嫌だったから。私の時間はある程度取っても良いけれど、もしもその内容がコーチや選手たちにとってあまり必要なものではなかった場合、その場が苦痛になっちゃうからね。この時間がもったいない、それよりもっと他のことをやった方が有意義じゃないか……って。今まで受けてみた研修は、そういうものばかりでした。一方、識学の場合は組織マネジメントにおける識学独自のメソッドを私にだけレクチャーしてくれる、というものだったので、他のコーチングや研修とは趣旨が異なっていました。
ちょうどその時期は、前年の課題を踏まえて新しいスタッフが入ったり、次のシーズンに向けてどんなポイントを強化していかなければならないか、そしてその方針をいかにコーチングスタッフ達に落とし込み、さらに彼らが選手達に伝えていくかを考えていたので、その上で何かヒントがあれば良いな……と思い、決断しました。」
後藤
「当時はどのような課題があったのでしょうか。」
細谷
「私が選手に求めるプレーやプラン、ポジションスキルだったり、あるいは大きなことでいえばシステムだったりとかがしっかりとブレないようにコーチングスタッフ達に伝える上で、どうしたらスムーズに同じ方向にベクトルが向くかな、ということを常に考えていました。日野自動車には、FW(フォワード)コーチやBK(バックス)コーチ、戦略コーチ、S&C(ストレングス&コンディショニング)コーチ、メディカルトレーナー等のコーチングスタッフ計12人在籍していて、彼らをどう束ねていくのかが監督としての難しさでした。そのため、識学のメソッドを活用して一人ひとりに明確な役割を与えていくことができれば、思い描いているゲームプランをしっかりと体現できそうだ、と感じました。」
12名のコーチングスタッフに明確な権限・役割を与えたことで、組織がまとまった
後藤
「識学のトレーニングを受けたことで、課題をどのようにクリアしていったのでしょうか。」
細谷
「この課題に関しては、「選手の任命権者が誰なのか」を明らかにすることで解決できました。どのコーチにどの選手を起用する権限があるのか。選手は、誰に評価されるのか。それを、コーチングスタッフ・選手の双方が正しく認識できるように、評価の仕組みは識学のメソッドを軸に徹底的に見直しました。」
後藤
「スポーツチームを会社に置き換えると、「監督=社長」「コーチングスタッフ=中間管理職(上司)」「選手=社員(部下)」という組織構造なのですが、一般的な企業のマネジメントに比べて団体スポーツチームのマネジメントが複雑な点は、社員が関わる上司の人数が多いという点ですね。例えば、企業の場合は、営業部に所属している社員は営業部のリーダーが直属の上司です。一方、ラグビー選手の場合は、自分がFWのポジションだとしても、関わるコーチはFWコーチだけではありません。戦略コーチとも話すし、S&Cコーチとも話します。そうすると、選手は「誰の評価を獲得すれば試合に出場する機会が得られるのか」がよく分からなくなり、逆にコーチも自分のポジションをキープしたいがために、選手からの評価を獲得するために囲い込みをしたり……という状況に陥りやすいのです。」
細谷
「まさにそういう状態が自分のチームで起こっていることを後藤くんに指摘してもらい、「なるほど」と思いました。なので、識学のトレーニングを受けてからは、「FWの選手を選ぶのはお前の役割」「BKの選手を選ぶのはお前の役割」「戦略コーチの役割はチームに必要なスキルをしっかり落とし込むこと。だから選手を選ぶ権限はない」……というように、各コーチングスタッフの役割と権限を明確にしました。」
後藤
「それは素晴らしいですね。実行に移すのは、なかなか難しかったのではないでしょうか。」
細谷
「「誰がどんな役割と権限を持っているのかは、明確に伝えるべきです。指示を曖昧にすると、指示された側も曖昧に受け止めてしまうため、コーチングスタッフ間で『このメンバーを使ってほしい』というやりとりが生まれ、監督のゲームプランの実現を阻害する要因になります」と後藤くんにヒントをもらい、すっと腹落ちできたので、実行に移しやすかったですよ。」
後藤
「僕も女子ラグビーチームのヘッドコーチ経験がありますが、僕の下についているコーチが一人だけだったので、僕の思いは浸透させやすかったんです。しかし、ドルフィンズのようにスタッフが十数人もいると、その役割を整えるのは何倍も大変。おそらく、他のラグビーチームでもなかなかできていないのではないかと思います。」
入れ替え戦の勝因は、“行動が無意識化できていたこと”
後藤
「コーチングスタッフの役割や評価軸が明確になったら、次は監督の思い描くゲームプランを試合で実行するために、どんな部分を強化していくか……という話になってくると思うのですが、その点はいかがでしょうか。」
細谷
「ラグビーは、「数字に表せない部分をどれだけ献身的に取り組めるか」が重要な競技です。試合中、ピッチに立つ選手は両チーム合わせると30人。その中で、同じ時間帯にボールを触れるのは一人だけ。その中で、「トライを取るのが一番の評価」としてしまうと、みんながトライを取りに行って、パスもディフェンスもしないチームになってしまいます。そこで、私が2017年度に取り組んだのが、RTP(リターントゥポジション)。「正しいポジショニングにどれだけ早くつくか」、です。ボールには触れないかもしれない。けれど、そこに人が立って仕掛けることによって、本来ボールを運びたいところにディフェンスがおびき寄せられて、スペースが空く……という、勝機を生み出す上で欠かせないプレーを全員が試合本番で実行できるよう、徹底的に練習をさせました。」
後藤
「本来であれば、ディフェンスに関しては「こういう風に並べ」とか、「こういう角度で出ろ」というような、システムの面で何とかしてしまおうと考える指導者が多いんです。細谷監督が仰っているRTPというのは、「倒れている人が、何としてでも一生懸命立って、倒れてから何秒以内に起き上がれ」というもの。この本質的な部分を結果点として設定し、徹底することで、全体がリンクしていって、結果良いディフェンスが生まれたわけですね。」
細谷
「RTPはラグビー選手にとって基礎中の基礎ですが、このプレーこそがTLを目指す上で大事なプレーなんだ、と気づかせることが大事なのだということを常に意識し、コーチングスタッフや選手達にも伝えていました。TL昇格が決まったNTTドコモとの入れ替え戦でも、非常に良く効いたプレーでした。」
後藤
「入れ替え戦の相手がNTTドコモに決まってからは、チームを勝利へと導くためにどのようなことに取り組まれたのでしょうか?」
細谷
「自動昇格が懸かったホンダとの試合に負けてから、NTTドコモとの入れ替え戦までには1カ月弱ほどの期間があったのは幸運でした。NTTドコモは攻撃力が非常に高いチームだったので、そのチームに勝つためには、やはりディフェンス力の再強化が重要なポイントでした。一番恐れなくてはいけなかったのは、「チーム内での怪我」。RTPやランナーを身体の芯で止める練習は必ずする必要がありますが、練習中や試合当日に誰かが怪我をしてしまったらチーム力が大幅にダウンしてしまいます。そのため、「1対1の状況は絶対に作ってはいけない。ディフェンスは、両サイドとのコネクションを絶対に切るな。それで一斉に仕掛けて、何度アタックされてもくずれなければ、絶対に相手チームはミスをする」ということを伝えるために、毎回練習前に他チームの同じ状況のプレーの映像を選手達に見せました。「このチームとうちのディフェンスのコネクション度合いをよく見てくれ。一人ひとりの幅はどうなっている?ラインスピードはどうなっている?RTPの状態は?どれだけ自分たちができているか比較しよう」……というのを、選手達が行動を無意識化できるまで毎回くどいくらいに伝え続けました。
この練習は、3週間ずっと続けました。ある選手からは「細谷さん、アタックの練習はいつやるんですか……?」と言われましたが、「アタックは残り1週間でやればいい。こっちはディフェンスの時間の方が絶対に長いから。去年68-12で負けている相手だぞ。トライなんて、取れても3本か4本だ。ということはそれより多くトライを取られたら負け。だから、どうしても今はディフェンスの時間を増やしたい。そのために何回も映像を見せているんだ」と伝えました。」
後藤
「その練習の成果が、1月20日の入れ替え戦に出ていましたね!細谷監督のトレーニングを担当させていただいていた期間に、何度か過去の映像を拝見していましたが、その時と入れ替え戦のディフェンスは全く違いました。それは、細谷監督が反復を繰り返させて、やるべき行動を完全に自動化させることができたからだと思います。無意識に身体が動けば、相手よりも早く次の行動を起こすことができるということが結果に表れましたね。」
「スキル」ではなく「マネジメント力」でチームを勝たせる指導者を目指して
後藤
「入れ替え戦に買った日の試合を見た時に印象的だったのは、彼らが「日野自動車ラグビー部 DOLPHINSのメンバー」にしか見えなかったということ。というのも、普通のチームであれば、TLのチームから移籍してきた選手が混じっていると、その選手のプレーに他の選手が引っ張られることが多いんです。しかし、細谷監督はそれを「これが日野自動車のルールだ」ということを明確にし、コーチングスタッフや選手に守らせることで完全に消し去った。それは、監督の手腕があってこそだと思います。」
細谷
「そういえば、「自分はプレーヤーとしてのキャリアが他の監督にくらべると大したことはありません。だけど、スキルではなくマネジメント力で勝たせられる指導者はいない。自分はそういう指導者になりたいんだ」……という話を、最初に後藤くんに会った時にしたよね。識学のメソッドをたたき込んでもらえたことで、そこに一歩近づけたのではないかと思います。次のシーズンは、より識学のメソッドをチームに浸透させるために、各コーチングスタッフにも落とし込んでもらえたらと思っています。僕の言っていることを、コーチングスタッフ達がリアルタイムで理解し、反応してくれるようになれば、チームをより成長する方向へ導いていけると思うので。」
後藤
「ありがとうございます。最後に、どんな指導者に識学のトレーニングをお勧めしたいかお聞かせください。」
細谷
「指導者としての自分なりのスタイルは既に持っているけれど、そこにさらに別のメソッドを加えることを受け入れられる人には、ものすごく効くと思います。「そんなのは机上の空論だろ」「じゃあ現場に来てやってみてよ、そんなのは絶対に通用しない」……と、自分のやっていることが一番で他のやり方はない、という自信がある人が受けても無駄な時間になるから受けない方が良い。でも、そういう組織は伸びないと思います。私自身も、本来は人からとやかく何か言われるのは好きなタイプではありません(笑)。ただ、心をクリアにして、自分のやってきたことにもちゃんと自信を持って、その上で謙虚に話を聞く姿勢があれば、気づきがたくさん得られると思います。」

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